かぼちゃに黒猫にジャックオーランタン、そしてトレードカラーのオレンジ色に染まるこの季節。
元はハロウィーンの晩に訪ねて来ると言う死人の霊、精霊や魔女などから身を守るために仮面をつけたり、
悪い霊を怖がらせて追い払うためにお化けかぼちゃを飾ったりしたらしい。

今では、ハロウィーンと聞けば、仮装して騒いで、“トリック・オア・トリート”でお菓子貰うイベントという感じ。
宗教的な意味などすっとばし、楽しいとこ取りなのは今にはじまった事じゃないけども。

Trick or Treat?


と言えば?


仮装した子供達が言うには無邪気な合い言葉。

しかし、意中の彼女のそんな艶姿。

目の当たりにしてしまっては堪らない。

周りに誰もいない事を確かめて。

手持ちのお菓子が無くなったのを見計らって。

君に囁くよ。


「Trick or Treat?」


…恋を仕掛けてもいいですか?







☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



今日1日の仕事を終えて事務所に戻ってみると、視界一面がオレンジ色へと変貌していた。
至る所にカボチャのお化けが飾り付けられ、更にはロビーの一角に仮装用の衣装まで準備されている。
仮装したい人はご自由にどうぞと言う訳か?
いや、あの社長のことだから、出入りする人にはなにかしらの仮装を強要してそうだ・・・。

「そうか、今日はハロウィンか!それにしてもこれはまた・・・すごいな。」
「そうですね。」

昨日までは普通だったと思ったのに、さすがというかなんというか・・・。

「で、蓮・・・、俺たちもコレ・・・着ないといけないのかな?」

準備されている仮装衣装をシゲシゲと眺めていた社さんが、不安そうに先ほどの俺の懸念を口にした。

「まさか・・・大丈夫でしょ。ほら、仮装してない人も大勢いますよ。」
「ああっ、ほんとだぁ。よかったぁ〜。どうしようかと思っちゃったよ。」

そう言いながらも興味津々で衣装を物色している社さん。
ホントは着たいんじゃないですか・・・?

その時、突然かわいらしい声が降ってきた。

「蓮さまぁぁぁぁ〜♪」

声のした方を振り向くと、黒い羽根の生えたかわいらしい魔女の格好をしたまりあちゃんが嬉しそうに駆け寄ってくるのが見えた。

「お帰りなさぁ〜い!お仕事お疲れさま♪」

抱っこして〜とせがむまりあちゃんを抱き上げてあげる。

「ただいま。ありがとう。ちいさな魔女さんだね。かわいいよ。」

ぱぁぁぁぁぁぁぁっと満面の笑みを浮かべるまりあちゃん。
ウキウキと手に持っていた袋を広げて見せてくれる。その中には色とりどり、キレイにラッピングされたお菓子がたくさん詰まっていた。

「ほら、これ♪ 今、色んな部署をまわってお菓子をゲットしてきたの♪ 楽しかったぁ〜♪」
「一人でまわってたのかい?」
「ううん、おねぇさまと一緒に♪」
「最上さんと?」

突然あがった想い人の名前。その名前の主を求めて周囲を見渡してみれども姿を見付けることはできなかった。
そんな俺の様子を見てまりあちゃんが教えてくれた。

「おねぇさまは今ちょっと椹さんに捕まっているの。もうすぐ来ると思いますわ。」

そう言って俺の腕の中からするりと降りると、いまだ衣装を物色している社さんの傍に行き、一緒になってなにやら物色し始めた。

「ねねっ。蓮様もコレ着てみて♪」

そう言って持ってきたのはドラキュラのキバとマント。

「・・・これを・・・つけるの?」
「だいじょうぶよ!蓮様はどんな格好したって素敵だわ!!」

そう言ってはいっとキバとマントを手渡された。まりあちゃんにお願いされてしまっては拒否することも出来ず、言われた通りにキバを付けてマントを羽織ってみる。

「きゃああああ、やっぱり似合うわ〜蓮様!!とっても素敵〜!!」
とまりあちゃんが歓声をあげたその時、

「お待たせ〜。どうしたの、まりあちゃん・・・?」

パタパタとかけてくる足音と共に待ち望んだ人の声がした。
愛しい、会いたくて声を聞きたくてたまらなかった想い人の声。
しかし、振り向いて目にしたその姿に愕然とする。
頭には角付きのカチューシャ。
フリルが沢山ついたいかにも最上さんが好きそうなかわいい服。
魔女の設定なんだろう、黒ベースで腰のリボンだけが真っ赤・・・はっきり言ってかわいい!! とっても似合っている。
だけれども・・・なんだ、あの超ミニは!!
あんな格好で事務所中をウロウロしてたっていうのか?!
こんなかわいい姿を見たらますます馬の骨が増えるじゃないか!!
そんな俺の心中も知らず、いつものようにペコリと綺麗なお辞儀をしてあいさつしてくれる最上さん。

「あ・・・敦賀さん。おはようございます。お疲れさまです」

しかし、無表情で微動だにしない俺を怪訝に感じたらしい。

「あの・・・? どうかなさったんですか?」
「ああ、いや・・・なんでもないよ。大丈夫。その仮装は社長命令?」
「ええ・・・。最初は恥ずかしかったんですけれど、みんながかわいいって言ってくれましたので、だんだんその気になっちゃいました♪」

一瞬だけ顔が曇ったものの、すぐにテレテレとしながらそうですかね〜などと暢気に呟いている。
やっぱり・・・馬の骨がずいぶん増えたことは確実だな・・・。

「敦賀さんも仮装されたんですね。ドラキュラですか? とっても似合ってます〜♪」

「君も・・・」

君はそのかわいい刺激的な姿を一体どれだけの男に晒したんだい?
男どもが君をどんな目で視てたのか・・・!!
それを考えると胸のあたりがムカムカして腹の中が煮えくり返りそうだ・・・!!
沸々とドロドロとした感情が湧いてでてきて、どうにも制御ができない。

「最上さんも、ほんとうにかわいいよ。その格好、とてもよく似合っている。」
「ありがとうございま・・・・」

目が合った瞬間、最上さんの表情が固まったのがわかった。
さすが、俺の気分に敏感な最上さんだ。でも、そんな顔したってもう逃がしてあげないよ?
そんな姿で俺を煽った君が悪い。

「ところで・・・、trick or treat?」



小悪魔キョコたん
画像クリックでトップへ。October 27, 2010 by Ayuchi



できれば会いたくないかも・・・と思っていた大先輩に、まりあちゃんを探していたら会ってしまった。
だって、こんな格好、なんて言われるか・・・。そりゃ、会う人みんなかわいいって言ってくれたから、変じゃないんだろうけれど・・・でも、なんだか敦賀さんにみられるのは・・・恥ずかしい。
案の定、この姿を見た敦賀さんは、無表情で固まってしまった。
たわいない会話で乗り切ろうとしたはずなのに、なのに・・・今のこの状況は、一体全体どういうこと?!!!

「最上さんも、ほんとうにかわいいよ。その格好、とてもよく似合っている。」
「ありがとうございま・・・!!!!!!!!!!」

褒められてうれしくてお礼をいいつつ敦賀さんの顔を見上げれば、
そこにいたのは一瞬のうちにその表情と纏う雰囲気が夜の帝王へと変貌を遂げた敦賀さん。
ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!
いぃぃぃやぁぁぁぁぁ!
どうして急に夜の帝王様がお出ましになるのぉぉぉぉ??!!
しかも、ドラキュラのキバが妙に艶かしくて、色気3倍増しになってるし!!

そう思う間にも敦賀さんの端正な顔が容赦なく近づいてくる。その口元が鼻先を掠めて耳元に寄せられる。
息づかいがリアルに感じられ、背中を何かがゾクリと這い上がってきて思わず目を閉じてしまった。

「ところで・・・、trick or treat?」

予想していなかった台詞に一瞬何を言われたのかわからず、戸惑いつつ敦賀さんの顔を見上げる。
肩すかしをくらった気分・・・って、イヤだ、わたしったら何を期待してたってゆうのよ!! あ〜、もう! 心臓鎮まれ!!
するとそこにはいつの間にかキュラキュラスマイルを発動させた敦賀さんがいた。

「えぇえ・・・?!」

さっきまでのドキドキは一瞬にして消え去り、別の恐怖が押し寄せてくる。
こ、今度はなにぃ〜? わたし何か敦賀さんのイラツボつついちゃったかしら〜?(泣)
訳が分からずオロオロとしていると、そんな相手の様子を楽しむかの様に敦賀さんは更にキュラキュラを倍増させて微笑んでいる。

「だからね? trick or treat。俺は今仮装してるし、その権利はあるよね?」

マントを翻して、ね?という風ににこりと微笑む敦賀さん。
うう、その笑顔がひっじょ〜うに胡散臭いんですけどぉ〜。
けれども、傍らではまりあちゃんが目をハートにしてその笑顔にノックアウトされている。
敦賀さんの真意が掴めず警戒心丸出しで見つめ続けていると、ふいに敦賀さんがクスリと苦笑いして表情がやわらかくなった。

「くっくっくっ・・・! そんなに警戒しなくても・・・。今日はちょっと疲れちゃってね、少し甘いものでも食べたいかな、なんて思ったんだけど・・・ね」

「え? あっ! そうだったんですか!」

やだわ、わたしったら、一人で勘違いして、オロオロしちゃって。
ドキドキしちゃったりして・・・はずかしい。
でも、なんで夜の帝王やら似非紳士やらになる必要があるのかが腑に落ちないけれど・・・そうか! きっと、いつものイヂメね! もう!もっと素直に表現してくれればいいのに!

「ああ〜、すみません。さっき部室寄ったついでに、もらったお菓子も全部置いてきてしまったんです〜。」

「そうか・・・残念だ。」

そう言った敦賀さんの目は全然残念そうでなくて、むしろ嬉しそう・・・?と思った次の瞬間。
口角をくいっとあげて微笑んだ敦賀さんは・・・またもや夜の帝王に変貌していた。

「!!!!!!!!!!!!????」

声にならない悲鳴をあげるも後の祭り。ヘビに睨まれたカエルのように動けない。
満足そうに妖艶に微笑む敦賀さんからの最終通告が聞こえてくる。

「じゃあ、悪戯、させてもらおうかな?」


強制終了(笑)


Happy Halloween!

 

言うが早いかお姫様抱っこして、颯爽とキョーコちゃんを連れ去る蓮であった(笑)
そして、その場に取り残された社さんとまりあちゃん(^_^;;
甘い甘い極上のお菓子を手に入れた蓮。
果たしてどんなイタズラをするつもりなのか(爆)


あゆち 2010/11/22




拍手する


あゆちさんから頂いた、ハローウィーンぴったりのゴスロリ風の衣装を纏ったかわいーキョコたんのイラストです☆
ラブミーマーク入りのハートを弄んでる小悪魔ちゃん。
蓮が見たら人目に晒さぬよう、速攻でお持ち帰りしそうな罪なミニスカ姿ですな。(October 31, 2010)
そして、このハロウィン絵に絡んだプチSSまで頂いてしまいました♪(November 28, 2010)


Copyright 2009- Pillow Talk All Rights Reserved.

a template by flower & clover / materials by 素材通り & Angelic
inserted by FC2 system