We wish you a Merry Christmas

クリスマス2009記念・フリー

We wish you a Merry Christmas♪
We wish you a Merry Christmas♪
We wish you a Merry Christmas and a Happy New Year〜 ♫




BGMにどうぞ


「クリスマスおめでとう、クリスマスおめでとう、そして、新年おめでとう......、か」

そこかしこでクリスマスを派手に鮮やかに彩る宝田邸迎賓館。
その長い廊下を歩いていた社にも、どこからともなく流れて来るクリスマスソングが耳に入る。
クリスマスキャロルによく歌われる一つ、『We wish you a Merry Christmas』だ。

今夜はクリスマス・イヴ。

去年から恒例化しつつ『グレイトフル・パーティー』の準備のために、いち早く会場に到着した蓮と社。
例年通りの蓮のスケジュールでは12月24日に早く切り上げることなど到底ありえやしないのだが、そこは敏腕マネージャー。多少の無理と言うか、無茶もなんのその。蓮の機嫌には替えられないと、かなり強引にスケジュール調整した。


「う〜ん。蓮のヤツどこに消えやがった...。キョーコちゃんの傍だとは想像付くが...」


会場に着いた早々、社が少し目を離した隙に姿を消した蓮。
去年同様、パーティー用の料理やスイーツを一手に手掛けているキョーコに、挨拶でもしに行ったというのは容易に想像がつくが......。


Good tidings we bring to you and your kin♪
Good tidings for Christmas and a Happy New Year〜♫



「よい知らせを持って来ましたよ、あなたとそのご家族に......、か。ほんと、この歌の通り、クリスマスと新年がもたらす良き知らせとして、あの二人が纏まってくれないもんかなぁ、いい加減」


この一年間を振り返り、些か、いや、かなり......?遠い目をしつつ社は溜め息を吐く。
そんな社の心中などお構い無しに、流れるクリスマスソングは陽気さを増して行く。


Oh, bring us a figgy pudding♪(イチジクのプディングくださいな)
Oh, bring us a figgy pudding♪(イチジクのプディングくださいな)
Oh, bring us a figgy pudding and a cup of good cheer〜♫
(イチジクのプディングくださいな、そして、愉快にやりましょう!)



「イチジクのプディングくださいな...ね。確か、イチジクの入ったクリスマス・プディングのことだよな。
歌詞自体にちゃんと入ってるんだもんな〜。キャロル歌う駄賃にクリスマス菓子下さいって、単刀直入に」


さすが西洋のクリスマス・キャロル。謙虚さ素っ飛ばして本題へ直行だ……と、変なところで社は感心する。


We won't go until we get some♪(もらうまで帰りませんよ)
We won't go until we get some♪(もらうまで帰りませんよ)
We won't go until we get some, so bring some out here〜♫
(もらうまで帰りませんよ、さあ、ここに持って来て!)



「しかも、『もらうまで帰りませんよ、さあ、ここに持って来て!』...だろ。意思表示が見事にはっきりしてるよなぁ。この歌のほんの少しでもいいから、後手後手の蓮が感化されてくれんものか。こう欲しいものは欲しい!手に入れるまで粘る!って感じに。そしたら、キョーコちゃんとの仲もさくさく進展しそうなもの......」


普通、聞いただけで気分が浮上するはずのクリスマス・キャロルに、この反応。
蓮が聞いたら、「余計なお世話です!」と憤慨しそうな内容だ。
そうこうしている内に、社は迎賓館の厨房の入り口に辿り着く。
まだ時間が早い為か、お助け若葉シェフ達は到着していない。
見本となる一連の料理をキョーコが一人で用意してるはずなのだ。


「ああん、だめです、敦賀さん。......そんなに乱暴にしないで」
「初めは強めの方がいいって......言わなかった?」

(?!)

厨房に入ろうとしていた社は、扉越しに聞こえて来た会話に硬直した。
しかし、好奇心には勝てず、扉の隙からそっと中を伺う。


「確かに最初は強めに......ってお願いしましたけど......今は......もう少し優しくして下さい」
「優しくって、どんな風に?」
「こう、ゆっくり、ゆっくりかき混ぜるように......あっ、いいです、そんな感じ」


社が覗き見ているなど露知らず、蓮とキョーコは二人の世界に没頭している。
暫くの間言葉は無く、ただ単調なリズムだけが聞こえた。


「こんな感じで大丈夫? 初めてだろう? 乱暴にならないか心配で」
「敦賀さんってば......。とても、いいですよ? さすがですね」


ふっと一瞬、二人の視線が絡み合う。


「あ、やだ、敦賀さん。そこはそうじゃなくって......。もっと......奥まで」
「こう? ......こんな風に?」


蓮の大きな手に、キョーコの華奢な手がそっと添えられる。そして、一緒に動かし始めた。


「そう......もっと奥まで大胆に入れて下さい。それからゆっくり回して......そう、そうです」
「ふう、初心者なのに、手厳しいな。道具、使った方がよくない?」
「だめですよ、そんなのは邪道です! 腕が痛くなったのなら途中で止めてもいいんですよ?」
「いいや、最後までやる」


真剣な顔で言い切る蓮に、キョーコはクスクスと笑うと、ふっと顔を上げた。
瞬間、ばちっと社と目が合う。


「あ、社さんもいらしてたんですね。今、敦賀さんに生クリームを泡立てて頂いてるんです。クリスマス・ケーキのデコレーション用の」


そうにっこり笑うと、キョーコはテキパキと大粒のいちごやベリーを水で洗って丁寧に拭いて行く。
...今年のキョーコ特製のデザートも、さぞや見事な出来映えになるであろう。


(...............)


社の目の前には、キョーコから借りたであろう可愛い過ぎる赤鼻トナカイ柄の真っ赤なエプロンに身を包んだ『芸能界一いい男』。真剣な顔つきで生クリームの泡立てに取り組んでいる。


(一瞬、二人の会話から良からぬことを想像してしまったのは、俺だけではないと思いたい)


軽快なクリスマスソングは、軽やかに響き続ける。
...これからの未来を祝福するが如く。


We wish you a Merry Christmas♪
We wish you a Merry Christmas♪
We wish you a Merry Christmas and a Happy New Year!




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わざとらしく色んな箇所で主語が抜けてたりする…。ちなみに、都合上電気泡立て器を使わせてませんが、私は断然電気泡立て器派です。文明の利器は使ってなんぼさっ。
皆様にもクリスマスと新年の幸せが訪れますように。祈りを込めて。markura [2009.12.24]

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