HAPPYLIKE
君が幸せならばそれでいい。なんて、
そんな事は綺麗事だと最近やっと気が付いた。
君と俺が、幸せに。そうでなければ俺の人生に意味が無い。
「そう思わない?」
「思いません」
そもそも、何で"敦賀さんと私"なのかが解りませんし。
特に感情も見せぬまま俺の言葉をさらりと受け流す最上キョーコという女性は、再会したあの頃の勢いは今ではすっかり影を潜めて、代わりにいつの間にか大人の処世術を身につけた。即ち、無視・転換、さり気無い遠まわしな拒絶。
けれど、いつの間にか彼女が俺への対応に慣れてしまったように俺も彼女の様々な態度には慣れてしまって...それが良いのか悪いのかは、一先ずおいておくとしようか。
「俺って、中々お得な男だと思わない?」
「どこがですか。敦賀さんのお相手なんてリスクが高すぎてとてもとても」
もう何度目になるんだろう、こんな会話。
心の中に限界が近付いたある時、彼女を目の前につい口走ってしまった本音を誤魔化す為に、冗談に聞えればいいと軽い口調で本心を重ねた。
からかうなと真っ赤になって怒る彼女に、何度も何度も茶化しながら気持ちを告げる。そのうちに、最初は怖さ半分だったそれが段々快感になってきて、いつしか俺は彼女を見ると、そういう言葉を紡ぐようになっていた。
「俺は君を必ず幸せにする。だから、君も俺を幸せにしてくれないか?」
「生憎とワタクシ、必ずという言葉を信じられるほど子どもじゃ無いんですよ」
「じゃあ、幸せだと感じて貰える様に精一杯努力する」
「ああ、それならまだ何とか。精々頑張って下さいね」
「それって、俺と付き合ってくれるって事?」
「上の喫茶店くらいまでならいつでもお付き合いしますよ」
正直虚しい気も、している。いつまでもこのままでは駄目だと分かっている。
でも今更、どんなタイミングでどう告げれば君に俺の言葉を信じて貰えるものか少し後悔、悩みながら。
「じゃあまずはその喫茶店まで、お付き合い下さいますか?お嬢さん」
けれどこの関係は楽しくて、じゃれあうような会話の流れが嬉しくて。
何よりも、軽口にのせてとはいえ好きだと告げられる事、そして口では色々言いながらそれでも逃げずに避けずに相手をして、最後には笑ってくれる彼女を見てたら幸せで、
「私が幸せを感じられるように、甘いものをご馳走下さるなら」
「仰せのままに。君が幸せなら俺も幸せですから。了解?」
(こういうの、もしかして不毛って言うんだろうか)
でも幸せは本物。
君が幸せならばそれでいいなんて、そんな事は綺麗事だと最近やっと気が付いたんだ。
君と俺が、幸せに。そうでなければ俺の人生に、意味が無い。
まずは喫茶店で、一緒に何か甘い物でも。
『そこから始まる何か』なんてのも、ドラマの中では良くある話。そう思わない?
HAPPYLIKE
「ええっと、ミラクル☆スーパーエキセントリックジャンボパフェにしますv」「...幸せすぎて胸ヤケをおこしそうだよ、俺...」2007/3/24
「HAPPYLIKE」コバト様のフリー作品。
丁度これをお目にかけたのが私の誕生日だったので、勝手に誕生日プレゼントにとこじつけて強奪した物(いや、ちゃんと断ったから「強奪」とは言わないか?)。ほのぼのとした作品、ユーモアに飛んだ物から、切なく感じる物まで、様々な蓮キョを書き描いていらっしゃいます。